蒼穹の誘惑
幼い頃から自分は早熟すぎた。

思春期というものがなかったような気がする。故にその時期特有の感情の起伏や苛立ち、親への反抗心などもなかった。

両親の別居と離婚を経験し、小学生ながらに自分の身の振り方を冷静に考えなければならなかった。

良すぎる頭脳が物事を論理的に考えさせ、心を早熟にさせたのかもしれない。

まだガラスのような繊細な心でも持ち合わせていれば違ったのかもしれないが、幸か不幸か、彼女は現実を受け入れる強さを持っていた。

長谷川の娘として、強く生きなければならなかった。

ゲームの勝者となり、誰もが羨むような人生を送ってみせると誓ったはずなのに、それがいつの間にか重荷になっていた。

それに気付いたのが、初めて心を許した相手に裏切られた時とは皮肉なこと-----

だが、それも全て終わったことだ。

「これからはとことんバカなことをするのもいいかも」


(マロリーのように……)


そうポツリ呟き、みずきはサンダルを指にひっかけ、雨の中を軽い足取りで進んだ。



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