蒼穹の誘惑
カフェマシェリからみずきのマンションまでは徒歩10分程だが、その僅かな時間が、すごく開放的に感じた。

Tシャツはしとどに濡れ身体にピタリと張り付き、ショートパンツからむき出した白くすらっとした脚を雨水が伝う。

とても扇情的な姿だが、不思議と淫靡さはなく、どこか可憐で清々しい。

まるで映画のワンシーンのような光景に、みずきは道行く人の好奇の目を引き付けた。

だが、振り返る人々の誰も、彼女の生立ちや肩書など気に留めない。

結局世間とはそういうものだ。

自分がこだわっていただけだ。


(私は大丈夫……日本を離れて一からスタートさせよう)


打ちつける雨が、全てのしがらみと重責を洗い流してくれている、そんな感覚だった。



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