蒼穹の誘惑
「刑事告訴は致しません。リベートで得た分を公正証書に基づき株主総会前までに返金してください。ここ数年の円高で為替利益で得た額を考えれば問題ないでしょう?そして、西条専務、新垣相談役と共に隠居していただきましょうか?」
「……っ……」
最早、背広の中は汗でぐっしょりだ。それなのに、暑さは感じられず、ただいいようのない震えに襲われる。
「今ワンクリックでこれを役員全員のメールに転送することができます。中にはあなた同様に青ざめる方々もいるでしょう?」
「条件を呑まなければ、か?」
「今ならまだ間に合います。このまま潔く身を引いて奥様と残りの隠居生活を楽しむことも可能ですよ。優しい奥様ですね?あなたとの離婚は考えてないそうです。それとも、役員会議にかけられ、背任罪で刑事告訴されるか……?」
「最初からそのつもりで……」
「膿は出し切らなければならない」
低く静かに響くその声に、若干三十にもならないこの男を初めて恐ろしいと思った。たかが若造と高をくくっていた。
みずきを追い落とすことばかり先走って、油断した。
だが、今更気付いたところでもう遅い-----
「……っ……」
最早、背広の中は汗でぐっしょりだ。それなのに、暑さは感じられず、ただいいようのない震えに襲われる。
「今ワンクリックでこれを役員全員のメールに転送することができます。中にはあなた同様に青ざめる方々もいるでしょう?」
「条件を呑まなければ、か?」
「今ならまだ間に合います。このまま潔く身を引いて奥様と残りの隠居生活を楽しむことも可能ですよ。優しい奥様ですね?あなたとの離婚は考えてないそうです。それとも、役員会議にかけられ、背任罪で刑事告訴されるか……?」
「最初からそのつもりで……」
「膿は出し切らなければならない」
低く静かに響くその声に、若干三十にもならないこの男を初めて恐ろしいと思った。たかが若造と高をくくっていた。
みずきを追い落とすことばかり先走って、油断した。
だが、今更気付いたところでもう遅い-----