蒼穹の誘惑
「高宮、ただでは済まさんぞ……」

「証拠書類は私の手にあります」

「浅野も、篠田もグルかっ?」

「さぁ、何のことか……彼らもまたビジネスマンなだけですよ」

「くっ……」

目で人を殺せるなら、今の栄次郎は間違いなく高宮を殺していただろう。

悔しさに、歯がゆさに、栄次郎の大きな身体が震える。

この時を待っていた。

高宮はその姿を目に焼き付け、これが栄次郎ではなく、その兄------今は亡き丈一郎だったら本望だ、と切実に思った。


(あと一年早く行動していれば-----)


目的は達成したというのに、いいようのない苛立ちが込み上げてくる。

だが、敵の前で感情を見せてはいけない。

高宮は、目の前の老兵から視線を外すと、デスク上の電話の受話器を手にした。

「園田さん、副社長がお帰りです。車を一台用意してください」



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