蒼穹の誘惑
「先日、ここでシンポジウム後のリセプションパーティーがありました。ロービーで偶然みずきさんを見かけて。声をかけようと思ったんですが、自分がしたことを考えるとどうしてもできなかった。でも、今ちゃんとお会いして謝らないと、僕は一生後悔すると思ったんです」

切なげに視線を寄越すその姿は、いつもの好青年の浅野に戻っていた。

あの日の、どこか追い詰められた、殺伐とした雰囲気はない。

心から許しを請うているようだ。その真摯な態度に、みずきの警戒心が緩む。

「明日ニューヨークに経つことは誰から聞いたの?」

「高宮さんが教えてくださいました」

「高宮が-----?」

高宮の名前を聞くだけでみずきの心はまだざわめく。

「僕がどうしてもみずきさんにお会いしたいとお願いしたんです。今日は、失礼も承知で来ました。あまり使いたくありませんでしたが、父の名前を借り、ここに通させてもらいました」

浅野の父は、ホテル王とも呼ばれた篠田和正だ。

彼の名前を使えば、世界中どの高級ホテルのクラブフロアにも簡単に入れるだろう。



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