蒼穹の誘惑
「お父様、インターステイトの篠田氏だったのね?」

父の名前を出され、浅野の瞳に動揺の色が走る。

「長谷川の副社長と、私の叔父と旧知の間柄なのはもう知っているわよね?」

「-----はい」

「私は負けたのよ。もっと上手く立ち回れたはずだったのに、焦って大事なことを見落としていた」

「いいえ、それも僕が言いなりにならなければ……後ですごく後悔しました。あの時は気が動転して自分を見失っていた。今更何を言っても許してもらえないのは分かっています。本当に申し訳ありませんでした」

今度こそ、テーブルからゴンと地響きが聞こえてきそうなくらい深く頭を下げる。

「だから、謝らないでって言っているでしょう?私は浅野君を責める気なんて本当にないんだから。脅迫されたんでしょう?大方浅野君の会社を潰すとでも言われた?」

浅野は何も答えず頭を下げ続ける。

「それにしても我が叔父ながら卑怯よね?自分の力を使わずに虎の威を借りるなんて!でもね、今は感謝しているわ。今長谷川みずきという一人の人間に戻れてすごく気が楽になった気がするの。だから、浅野君、頭を上げて?」

「でも……」

浅野がうやうやしく頭を上げる。

本当に、見上げる瞳が子犬のようだ。

全く年下の男は-----


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