蒼穹の誘惑
思いのほか楽しかった最後の晩餐の時間は、あっという間にすぎてしまった。

「みずきさん、本当にニューヨークへ行かれるんれすかぁ?」

みずきにかなりの量を飲まされた浅野は呂律も朧げにみずきにからむ。

「浅野君、酔ってるでしょ?目がうるうるしてる」

「かわいいとか言わないでください」

「あら……」

「今日は飲まないって、お酒に弱いって言っているのに、みずきさんが日本酒とか飲ませるから……」

「やだ、私は別に無理強いなんてしてないわ」

「ほぼ脅しでしたよ」

「ふふ、つい浅野君がかわ……」

かわいいとまた言いそうになり、言葉を継ぐんだ。

足下がややおぼつかない浅野の腕を引きエレベーターに乗せる。

「ロビーまで送るわ」

「いいですよ、僕は大丈夫ですから」

「ふらふらしてるくせに。それに、酔わせたのは私の責任だし」

「すみません。最後の最後までカッコ悪いなぁ……」

「私、お酒には強いの。大抵の男の人は先につぶれちゃうわね」

エレベーターに乗り、ふわっと重力が浮く感じに、みずきは急に立眩みを覚える。



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