蒼穹の誘惑
「すみません、かなり飲ませてしまいました。あとお願いしてもいいですか?」

「はい、了解しました」

運転手に任せ、浅野を後部座席に乗せると、みずきはどっと身体の力が抜けるのを感じた。

広いエントランスフロアを、大の男一人ピンヒールで支えてきたのだ。

しかもみずき自身もかなり飲んでいたのでフラフラだ。

「大丈夫ですか?」

「はい、なんとか……」

車体に身体を預け、呼吸を整える。

完全に運動不足だ。

ちらっと浅野の様子を確認すると、酔いつぶれてしまったようだ。

これが彼とのお別れかと思うと苦笑いがこみ上げてくるが、このまま何もいわず別れた方が良いのかもしれない。


最後は楽しい思い出のままに-----


運転手にお詫びを言い、車から離れようとした瞬間、背後から急に肩をひかれた。

その刹那、みずきの腹部に強い衝撃が走る。

痛みと苦しさに、途切れていく意識の中、相手の腕を掴もうとするが、それも虚しく空をかく。

バタンと車のドアが閉められたと感じた瞬間、みずきの意識は暗闇へと落ちて行った。



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