蒼穹の誘惑
シナリオは簡単だった。

新事業を、役員の反対を押し切り進めていたにもかかわらず、浅野との個人的確執で業務提携を失敗に終わらせたみずきがその責任を取り、代表取締役社長から辞任する。

それには、浅野の父であるインターステイトの篠田の力が必要だった。

浅野に圧力をかけるだけでなく、長谷川の執行役員を納得させるだけの影響力と資金力を持つ男。

栄次郎にとって、全て順調に進んでいた。

自分が代表取締役社長の座に正式に就いた矢先には、ソフト開発部門のM&Aを進め、半導体部門に焦点をしぼり、長谷川を立て直す方向に持っていく予定だった。

栄次郎の誤算は、彼自身がそのシナリオの捨て駒のうちの一つでしかなかったということだ。

知らず知らず敵に手の内を全てさらけ出し、ご丁寧に塩まで送っていた。死神に釜を振り下ろされたと気付いた時には既に遅く、片足は棺桶に浸かっていたのだ。



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