蒼穹の誘惑
「大した度胸だ。さすが長谷川の娘だな」

「もう、長谷川とは関係ないわよ。目的は何?お金?」

「さあな……そう焦るな。頭のいいお譲さんのことだから、逃げようとしても無駄なことは分かるよな?」

「ええ、今あなたのその自信たっぷりの態度ではっきりとわかったわ。ここは都心からかなり離れた山奥ね。標高も高そうだし。このワンピースとパンプスでは、まず逃げられない所ね」

「ほう……」

男の目が珍しいものでも見るように細まる。

「大した洞察力だな」

「嗅覚と感はいいのよ」

「好奇心は押さえて、もう少しここで待っていてもらおうか?」

男が立ち上がり、部屋を出ようとドアを開けたとき、みずきは思い立ったように声をかけた。

「ねぇ、浅野君はどうなったの?」

「浅野――――?さあな。俺の仕事はあんたをここに閉じ込めておくことだ」

誰のことだ、と目を細めるが、演技なのか、本当に知らないのか、推測することができない。

ドアが閉められ、鍵がかけられる。足音に耳を澄ませたが、何も聞こえなかった。



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