蒼穹の誘惑
あの男は、完全にプロだ。足音がない。

ドアが閉まった瞬間、気配が消えた。

ドアを開けたときに、かすかな物音と話声らしきものが聞こえたような気がする。

複数犯として見たほうがいいだろう。

みずきを連れてきた二人の男の他にも数名仲間がいるのかもしれない。

今更ながら、とんでもないことに自分が巻き込まれていることに気付く。

心臓がドクンと大きく波打つ。

助けがくるのを待ちたいところだが、恐らくそれは期待できないだろう。

本来自分は、今頃飛行機の中のはずだった。誰もが、自分はニューヨークへ飛び立ったと思っているに違いない。

別れが煩わしくて携帯を解約し、誰とも連絡を取らなかったことが、今になって裏目に出ている。

かすかの望みは、ホテルをチェックアウトせずに荷物をそのままにしてきたことだ。

ホテル側が長谷川に連絡してくれれば良いのだが−−−−



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