蒼穹の誘惑
「画像は?」

「合成ではない。本物だ。解析をかけたが、恐らく、お嬢さんが持たされていた新聞も本物だろう。データをそのまま添付せず、スキャンして解像度をわざと落としてある」

「稚拙な……ありがとうございました。夜分遅くに申し訳ありませんでした」

片桐からスマホを受け取ると、高宮は軽く頭を下げた。

リビングのドアノブに手を伸ばし、「このお礼はまた……」と口にしたとき、片桐はそれを遮るように立ち、口角を上げてニヤリと笑った。

口元は笑っているのに、先ほどの冗談めいた雰囲気はなく、それは一瞬で、頂点に立つ者だけが有する他を圧倒するような空気に変わる。

「蒼冴、お前が俺の会社に入ってくれれば、この貸しはチャラにしてやるよ」

片桐の有無を言わせない圧力に、高宮は動じた様子もなく、フッと薄く笑う。

「私には恐れ多い話です。小生身の程をわきまえてますから」

「クックッ……よく言う。俺は諦めてないからな?この件が片付いたらゆっくり飲みに行こう」

「美人の奥様によろしくお伝えください。時間がありませんので行きます」

高宮は片桐の誘いにはイエスともノーとも答えず、再度頭を下げると、颯爽と片桐の前を横切った。



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