蒼穹の誘惑
内心心臓は暴れだしそうなくらいドキドキしていたが、仁科の「指示に入っていない」という言葉にかけてみた。

明らかに雇われたこの男たちは、いわゆるその筋のプロだ。契約以外のことはしないはず。恐らく、みずきを傷つけることは、依頼主の意に反するのだろう。

ゴクリと唾を呑み込み、怯まず相手を見据える。

「まぁ、予想はしていたがな……」

「せめて何の書類か教えてくれない?」

「ふっ……あんたには、もう少し強行手段が必要なようだな?」

薄く笑う仁科に、背筋がぞっとするような、悪寒が走った。

「仁科さん―――」

黙っていた大男が苛立った様子で仁科の傍に寄り、軽く耳打ちすると、男は部屋を出ていった。

暫くしてドアがノックされ、大男と一緒に入ってきた人物を確認すると、みずきの顔は驚愕に染まった。

さらさらの髪に、女性も羨むようなその美貌は、どことなしか疲れて見える。

その男は、ゆっくり歩みを進めると、みずきの横に座った。




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