蒼穹の誘惑
「守るって……浅野君の目的は何?その為に私をここまで連れてきたの?」

「今は言えません。手荒なことはしたくありません。お願いですから……」

浅野は、ペンをぎゅっとみずきに握らせる。かすかにその手が震えている。よく見ると、浅野の額には汗が滲み出ていた。

何かがおかしい、と感じた。

みずきは、ペンを離すと、浅野をじっと見つめた。

「浅野君、あなたは余り嘘をつくのが得意じゃないのね?無理よ、サインはできないわ」

「みずきさんっ!」

浅野の焦った叫びにみずきは目を見張る。

その瞳が切なそうに揺れた瞬間、書類は男の手に奪われた。

「タイムリミット、だな」

仁科はチラッと腕時計に目をやり、もう一人の男に視線で指示を促す。

「浅野さん、部屋に戻ってください」

ドアの外で待機していたのだろうか、男がもう一人入ってきたかと思うと、浅野の腕を掴む。

「おいっ!みずきさんに何をするつもりだ?約束が違うぞ?」

「一度しか言いません。外に出てください」

その声音に、浅野の身体がビクッと揺れる。

「みずきさん、サインしてください。これが最後ですっ……」

浅野は悲痛な声を上げ、みずきに訴えるが、腕を掴まれ、引きずられるように部屋から追い出された。



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