蒼穹の誘惑
(2)
みずきは、混濁する意識の中を行ったりきたりしていた。
ここに連れて来られてどれくらい時間がたったのだろうか。
水しか与えられていないせいか、思考能力がかなり鈍ってきている。
消費するカロリーを最低限に抑えようと、脳が指令を送っているのだろう、眠気が半端なく、嫌でも暗闇に落ちそうになる。
身体を起こそうとするが、もう指一本動かすのもおっくうだ。
ただでさえ、一度殴られ全身打撲のような状態だったのに、更に壁に打ち付けられた。
この時ほど気の強い自分の性格を呪ったことがなかった。
電話に向かって話せと言われ、無性に腹が立ち、あの大男に唾をかけてやった。
案の定、直情型のあの下種野郎に思いっきり殴られた。
デスノートがここにあったら、一番にあいつの名前を書いてやろう、と思ったが、男の名前など知らないことに気付き、苦笑いがこみ上げてきた。
あぁ、まだこんな風に笑える、自分はまだ大丈夫だ、と心に言い聞かせた。