蒼穹の誘惑
意識が途切れそうになったとき、大きな音と供に、部屋のドアが勢いよく開けられた。

驚きに目を見開くと、視界に飛び込んできたのは、あの綺麗な顔を歪ませ、心配そうに覗く浅野の顔だった。

「みずきさん、大丈夫ですか?」

頬にそっと手を添えられ、反射的に身体がビクンと後ろずさる。

「浅野君―――」

浅野はみずきの拘束を素早く解き、自分が来ていたシャツをそっとかけてくれた。

「時間がありません。逃げましょう」

「あ、浅野君、どういうこと?」

「説明は後です。今は時間がないのです。仲間が戻って来る前に早く」

浅野は、みずきを立たせようと腕を回すが、身体中に痛みが走り、みずきはその場に蹲った。

「大丈夫ですか?」

「え、ええ。かなり身体のあちこちが痛いけど大丈夫よ。でも浅野君、どうして……」

「僕のことは信用できないかもしれませんが、今はそんなこと言っている暇はないんです」

浅野は、腰に手をあて、みずきを支えるように身体を起こす。

「辛いと思いますが、我慢してください。必ずみずきさんだけでも逃がしますから」

浅野の瞳は真剣だ。嘘をついているようには思えない。

信じる信じないはおいといて、ここにいるよりまだマシだろうと、みずきは何とか立つ脚に力を入れた。




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