蒼穹の誘惑
みずきは思わず浅野の手にそっと自分の手を重ねる。とても自然に。

浅野の指がピクンと跳ねる。

キレイなのは顔だけではなく、指も、だ。

この指でどんな風に触れるのだろう。

高宮につけられた欲望の火がまたみずきの中で燻り始める。

軽率な行動をするな、と言うが、これでは逆効果だ。

「みずきさん……」

「はい、何でしょう?」

みずきの手をぎゅっと握り返し、彼は真面目な顔で聞いてくる。

「今度は商談とか抜きに食事に誘ってもいいですか?」

「それはデートの申込み?」

「はい」

「クス、喜んで♪」

浅野の顔がぱぁっと輝き、みずきはその唇にキスをしたい衝動にかられた。

テーブル越しでなければ、確実に唇を奪っていただろう。

浅野の顔へと手を伸ばしかけたとき、タイミングを計ったように、コンコンとドアがノックされる音が響いた。


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