蒼穹の誘惑
社長室に戻るなり、みずきは急に疲れを感じた。スプリングコートを脱ぐや否や、ソファの上に倒れこんだ。

「社長、また皺になりますよ」

脱ぎ捨てたコートを拾い、高宮が侮慢した視線を落とす。

「この後は家に帰るだけだから別にいいわよ。高宮君、お小言は明日にして……」

浅野との商談内容をまとめなければならないのはわかっていたが、とりあえず、10分何も考えずに休みたい。

「15分、ううん、30分後に起こして?」

「---10分後に起こします」

「………」

「どうしました?本来すぐにデスクに座って頂くところを譲歩したんですよ?」

何の為に30分と言い替えたのだろうか、とこの秘書と討論しても時間の無駄だ。睡眠時間が減る。

今のみずきは与えられた時間が10分でもいいから休みたかった。

目を閉じるとふわっと温かいショールがかけられ、いつの間にか意識が微睡んだ。


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