蒼穹の誘惑
「あそこで簡単にキスを許せば、彼のあなたに対する記憶はその辺に転がっている女と変わらなくなる。焦らし欲しがらせることで彼の自尊心と欲望をくすぐったのです」

「なっ……」

だから、あそこでタイミング良く邪魔をしたのか?軽率な行動をするな、とはそういう意味だったのか?

「わかっていたけど、本当に最低な男ね」

「お褒めにいただいて恐縮です」

「褒めてなんかないわよっ」

みずきは髪をすいていた高宮の手をパンと振りほどく。

「あなたはどうやら勘違いされているようだ。今現在の長谷川と業務提携して得になることなどない。差異化が求められる中で、先代のときと変わらぬ方針で遅れをとっている我社とどうして浅野氏が契約する?」

高宮の声が冷たく社長室に響く。

みずきは何も言えず口を閉ざす。高宮の言っていることは正しい。それはみずきが感じていることでもあるからだ。

だが、それを変える為に、みすき自信もこの一年間頑張ってきたつもりだ。我ままで何もわからないお嬢さん社長の仮面を被り、取締役たちにわからぬよう水面下で動いてきた。


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