蒼穹の誘惑
「なぁ、蒼冴いいだろ~?頼むよ~そしたら来週は俺、家で大人しくしているからさぁ」

達也が高宮の腕に縋るように甘える。こんな時だけは、かわいい甥の顔になる。

「ダメだ……」

高宮の困惑した表情にさっき感じた違和感を思い出す。

「何でだよっ!?別にいいじゃん!前は俺の友達連れてきても怒らなかっただろ?」

「それは……」

「よし、決定!みずき来いよっ!」

「おい、達也、まだいいとは……」

達也は高宮の静止も聞かず、みずきの手をぐいぐい引いて走った。

この小さな手のどこにそんな力があるのだろうか、とみずきは驚く。

この年齢の子供によくある感情だ、その場凌ぎで甘えられているだけだ、と手を振りほどこうとしたが、無防備に自分を求めてくる達也に、どうしてもみずきは逆らえなかった。

背後に立つ高宮が、ひどく困惑していることにも気付かず、みずきは達也に手を引かれるままに並木通りを進んだ。



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