蜜色チェーン―キミと一緒に―


「由香って、ほわんとした雰囲気だし、あまり自分の意見とかも強く言わないでしょ?
ほら、同期とかで飲み会とかしても、由香は完全に聞く側だし、場所どこにするかとかそういうのを決める時だって、希望とか言った事ないじゃん。
口調も柔らかいし」
「んー……そうなのかな」
「そんな由香が強く言い切るから、ちょっと驚いたの。
でも、由香って普段ほわんとしてるけど、優柔不断ではないもんね。
ただ言葉にしないだけで、自分の気持ちは曲げないし」
「……そう?」
「うん。ふたりで受付やって二年目だけど、中には誘ってくるお客様とかいたじゃん。そういう時、由香はしっかり断ってくれるし。
それに、先輩たちにイヤミ言われた時も、飄々としてたし。
由香、見た目おとなしそうだし、“生意気”なんて言われたら泣き出しそうなのにね」
「そういえば、そんな事あったね」


懐かしく思いながら笑うと、愛美が「あと、あれも!」って私を指さす。


「先週、笹川専務が庶務の三村さんにセクハラしてるのを見かけた時も、止めに入ったでしょ。
あれはちょっとした武勇伝になったぐらいだもん」



< 10 / 285 >

この作品をシェア

pagetop