蜜色チェーン―キミと一緒に―
◇ゲームオーバー



「――あれ?」


金曜日の会社帰り。

そろそろ実家に顔を出しとかないと、と思って、バス停まで歩いていた時。
駅近くのホテルのロビーに、拓海くんの姿を見つけた。

道路側の壁が一面ガラス張りになっているから、中の様子がよく見える。


エレベーターに向かってるのか、一緒に歩いているのは、知らない女の人。
なんだか嫌な光景を見ちゃったな、なんて、痛む胸の前でぎゅって手を握る。


拓海くんが色んな女の人と一夜限りの恋を繰り返しているのは知ってる。

それがなんでだかは聞いた事はないけど、多分、誰にも執着しない自分を演じるためなんじゃないかなって思ってる。

いつか言ってたから。

『俺多分、女が好きじゃないんだよ。
母親の事があったせいか、一緒にいると無性にイライラする』って。




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