蜜色チェーン―キミと一緒に―


「いいからいいから。
よし。猫の力じゃ大きくならないなら私が協力してあげる。
所詮、肉球じゃねぇ。由香も物足りないでしょ?」
「ちょっ……っ、やめてってば! 愛美っ!」
「いいじゃーん。ほらほら」
「愛美っ!!」


始業前の廊下に、愛美と私の声が響く。
まるで学生の時みたいなテンションでじゃれあって、お腹が痛くなるくらい笑ってから、愛美が言った。


「胸張ってな。由香の気持ちは、誰にも負けないよ。
もしも誰か指さしてくるようなヤツがいたら、私が殴り飛ばしてやるから」
「……ありがとう」


ずっと、一人で抱える事しかできなかった、拓海くんへの恋心。
それはとても純粋な想いなのに、日の当たらないところに置きすぎたせいで、いつの間にかジメジメしてた。


例え本人に伝えられなくても。
例え後ろ指さされる関係でも。

この気持ちだけは、胸を張ってもいいんだ。


ただ、拓海くんが好きだっていう、この気持ちだけは。
間違いなく、本物なんだから。



< 99 / 285 >

この作品をシェア

pagetop