蜜色チェーン―キミと一緒に―
「さっきホテルでもめてた相手、義理の弟なんだよ」
「え……?」
「第二営業課の宮坂っていうんだけど、由香も知ってるだろ、多分」
「義理の弟って……社長の子どもって事? でも、再婚したとか聞かないけど……」
「社長の親が色々うるさいらしいから。それがイヤで俺の母親も逃げ出したくらいだし。
でも、籍を入れてないだけで、事実婚みたいなモンだよ。
一緒に住んでるんだから」
「弟さんも一緒に?」
「数年前までは一緒に住んでたらしいけど、今は一人暮らしだとか社長が言ってた」
「拓海くんは……いつその話を聞いたの?」
「宮坂の事? いつだったかな……。あいつが入社してきてすぐぐらいだったと思うけど」
「そうなんだ……」
見つめる先で、それぞれのマグカップに入った紅茶が湯気を立てる。