蜜色チェーン―キミと一緒に―


同じ部屋で、自分の好きな人が異性と数時間過ごしていたって知ったら。
拓海くんの言うように、いくら何もなかったって言われても、信じきれないかもしれない。


「なんでもよかったんだ。
宮坂が社長に告げ口したくなるような事だったら。
その時社長がどんな行動にでるのかを試したかっただけだから」


そう言った拓海くんの顔から、今までわずかに残っていた微笑みが消える。
表情からも声からも、完全に感情が消えていた。


「でもあの女……最後の最後で、宮坂を選んだんだ。
今まであいまいな態度しか見せなかったのに」


拓海くんが目を伏せたまま続ける。


「俺の前で、宮坂が大事だって言ってるのを見て……母親とダブった」




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