蜜色チェーン―キミと一緒に―
拓海くんは無表情だけど……その顔は、悲しんでるみたいに見えた。
ちゃんと心があるのか心配になるほどの拓海くんの横顔に、思わず拓海くんの手を握る。
拓海くんの温かい手に触れると、ちゃんとここにいるんだって安心できるから。
拓海くんの右手を、ぎゅって両手で握りしめると、しばらくしてから拓海くんが私の方を見た。
そして、わずかに微笑む。
「本当は、急ぐつもりはなかったんだ。
社長が言いなりになる今の状況は俺にとっても悪くないし、いっその事、適当な仕事だけして金もらって過ごすなら、それもいいとも思った」
「じゃあ……なんでわざわざ宮坂さんが社長に告げ口するような事してるの?」
急ぐつもりはない。
拓海くんはそう言ったけど、行動と矛盾している気がして聞く。
だって、拓海くんが動けば動くほど、拓海くんが言う“ゲームオーバー”は近づくハズなのに……。
なんでわざわざ自分からその答えを手繰り寄せているんだろう。
じっと見ていると、微笑んだままの拓海くんが答える。