蜜色チェーン―キミと一緒に―
「俺が、自分で思うよりも、ずっとガキだったから。
俺、誰も信じないし信じたくないって思ってるけど、やっぱり優しくされ続けると、どこかに期待する自分がいるんだよ」
「……どういう意味?」
「社長の事を、ずっと恨み続ける自信がなくなったんだ。
だから、俺がうっかり信じ込む前に結論出して諦めたくて。
もう、向こうから捨てられんのはごめんだし」
そこまで言った拓海くんが、私を見る。
微笑んだ顔はそのままだったけど……その笑みには切なさがにじんでいた。
「母親にあれだけ裏切られて、もう誰かを信じる気持ちなんか枯れたハズなのに……なんでまた信じようとするんだろうな。
それが、自分でも分からない。
由香は、なんでだと思う?」
拓海くんがどんな答えを望んでいるのか。
少しの間その答えを探していたけど、見つからなくて。
「心が少し元気になったから……?」
自分の思った事を言うと、拓海くんは微笑みながら困ったような顔をした。