蜜色チェーン―キミと一緒に―


『なにを見たのだかは知らないが……。
今の会話を聞いていたなら、自分の立場をよく考えるべきだったな』
『どういう意味ですか?』
『キミ、受付の子だろう。
一般社員なんかが私にたてついて、この会社に残れるとでも思ったか?
これだから若いやつは頭が悪くて困る』
『……この会社は、セクハラを止めるとクビになるって事ですか?』
『次の人事異動の内示を楽しみにしてるんだな。
……野原、か』


私が胸につけているネームプレートを指先ではじいた笹川専務が、部屋を出る。

本当にクビにするつもりなのかな、なんて考えていると、三村さんが私に近づいてきたのが分かった。


『あ、大丈夫でしたか?』
『私は大丈夫よ。でも、野原さんが……。
笹川専務に逆らってひどい目に遭った人をたくさん知ってるわ。
笹川専務のセクハラもパワハラも、庶務課では有名なのよ……』
『そうなんですか』
『だから、きっと野原さんも……っ』



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