蜜色チェーン―キミと一緒に―


「それもあるけど、さっき放送流れてたの聞いたから。
不審者がいたらしいから、気をつけて帰るようにって」
「あ、うん。私も聞いた」
「受付から見えた? どんなヤツだったか見た?」
「うん。若そうな男の人で、キャップかぶって白いパーカーにジーンズで、会社の前をうろうろしてたんだ。
服装とかは普通の大学生とかそんな感じだったけど、こっちを気にしてるみたいでなんか挙動不審な感じだった」
「顔とかは?」
「キャップを深くかぶってたから見えなくて。髪の色も分からなかったし……。
でも、もしかしたら、ただ、道に迷ったりしてただけかもしれないけど……」


説明すると、私から手を離した拓海くんは「ふーん」って唸った後、私を見た。


「俺、もうすぐ終わるから、待ってて。送っていくから」
「あ、大丈夫だよ。
明るい道通って帰るから」
「でも、危ないだろ」
「大丈夫だって。もう大人だもん。
それより、こんなところで話してるの見られたら、また変な噂立てられちゃうよ」



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