蜜色チェーン―キミと一緒に―
そう言った直後、どこかから話し声が聞こえてきた。
女の人の声だから、他の課の人が更衣室に向かってるのかもしれない。
「大丈夫だから。ありがとね」
それだけ言って笑顔を向けると、拓海くんは少し納得いかなそうな顔をしていた。
けど、近づいてきた声にため息をついて、私に背中を向ける。
拓海くんの様子が少しおかしいって感じてから、ずっと朝も帰りも一緒だったけど。
そのせいで私との噂が立っちゃったみたいだから、毎日待ち伏せするのはやめる事にした。
それでも、週に何度も会ってはいるけど。
噂になると、拓海くんにも迷惑がかかっちゃうし……。
色んな人と噂になっている拓海くん。
でも、私との事は誰にも知られなくないって、会社では他人を装ってる。
なんで私との事だけ、噂になりたくないんだろう。
もしかしたら、私を思っての優しさなのかもしれないけど……。
他人行儀が、たまに寂しい。