蜜色チェーン―キミと一緒に―


「この子の後つけて何するつもりだった?」
「別に、何もしねーよ! つーか、離せっ!」
「言わないと腕が折れるよ」
「痛……っ! 離せよっ!」
「……拓海くん、離してあげて」


私の言葉に、拓海くんが顔をしかめる。


「なんで? 襲われかかってたの、分かってる?」
「うん。でも、多分襲おうとしてたんじゃなくて、ただ話しかけようとしてただけだと思うから」
「由香。それ、本気で言ってるなら考えが……」
「だって、拓海くんが押さえつけてるの、勇樹だから」
「……勇樹って」
「――うん。私の弟」


ゆっくりと手を離した拓海くんが、ようやく上からどく。
すると、キャップを深くかぶっていた勇樹が立ち上がって、ひねりあげられていた腕を痛そうにぐるぐる回した。

白いパーカーに、ダメージ加工されているジーンズ、深くかぶったキャップ。
間違いなく、夕方会社前にいた不審者だ。


「……大丈夫? 勇樹」


聞くと、勇気は拓海くんを睨みながら、「大丈夫なわけねーだろ」って答えた。





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