蜜色チェーン―キミと一緒に―
◇責めるなら私を責めて



「俺は、姉ちゃんが全然家に顔出さねーから、母さんに頼まれて来たんだよ!
なのに、急に地面に叩きつけられて腕捻りあげられるし!
すげー痛かったんだからな!」


私の部屋に上がった勇樹が、怒りを爆発させる。
一方の拓海くんは、「だから悪かったって」って落ち着いたトーンで勇樹をなだめていた。

キッチンに立ちながら拓海くんと勇樹の会話を聞いてると、すごい温度差を感じて思わず笑ってしまうほど。


「もし次の試合で投げられなかったら、どうしてくれるんだよっ」
「試合? ああ、大学で野球やってるんだっけ。
すごいな、二年でエースなんて」
「ふん。褒めたって許してやんねーから。
生きてきた中で二番目に痛かったし!」
「へー。あんな程度で二番にランクインするんだ。
随分生ぬるい生き方してきたんだな」


勇樹も勇樹だけど……聞いていると拓海くんも悪いと思う。
わざと逆なでするような事言ってるから。

勇樹の反応が面白くてからかってるんだろうけど。
勇樹は歳の割には子どもっぽいから。


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