蜜色チェーン―キミと一緒に―
◇誰も望まなくても
拓海くんと初めて身体の関係を持ったのは、私が15歳の時。
中学三年生の冬だった。
下校途中、腰の高さまである公園の柵に寄りかかっている拓海くんを見かけた。
拓海くんがぼんやりと見つめる先にあるのは、車道。
両側二車線で、間には中央分離帯まである大きな道路だった。
拓海くんの指先にはタバコが挟まれていて、それを見て胸が痛んだ。
拓海くんがタバコを吸う時は、何かがあった時だって知っていたから。
家庭教師として私の部屋に上がるのは週に二回。
タバコの匂いをさせてくる時は、いつも拓海くんの表情は沈んでいた。
理由は、決まって家庭の事だった。
少し離れたところで立ち止まって見ていると、視線に気づいた拓海くんが振り返る。
感情をなくした瞳が、私を見て細くなった。