蜜色チェーン―キミと一緒に―


『母親がさ、妊娠したんだよ。
で、なんか腹が立ったから、また俺みたいな不幸なガキ生むつもりかって笑ったら父親に殴られて。
殴り返して、本当のことだろって言ったら、今度は母親に殴られた』
『……痛いよね? 大丈夫?
ハンカチ濡らしてくるから、待って……』
『“新しい家族”が生まれるのに、喜べない俺って、冷たい人間だよな』


走り出そうとしていた足が止まる。
拓海くんはわずかに微笑みながら、俯いていた。


『そんな事ないよ……』


お母さんの幸せを一番に願った拓海くんは、誰よりも優しい。
それを踏みにじったおばさんやおじさんに、拓海くんを殴る資格なんかないのに―――。


『拓海くんは悪くない。何も悪くないよ』


柵に座っている拓海くんの身長は、15歳の私よりも低かった。
近づいて、拓海くんの頭をぎゅっと抱き締めると、拓海くんがふって笑ったのが分かった。



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