蜜色チェーン―キミと一緒に―


だけど、優しい拓海くんが私を置いてひとりでどこかに行っちゃうなんて考えられない。
だから、戻ってくるに決まってるんだ。

この胸騒ぎは、私の勘違いに決まってる。

不快なドキドキを、無理やりそう思い込もうとしていた時、ケータイが鳴った。
急いで手に取って見ると、ディスプレイには拓海くんの名前が表示されていて……。
不安になりながら電話に出た。


「拓海くん?」
『おはよう、由香。もう起きてた?』
「うん……。拓海くんがいないから探しに行こうと思ってたところ。
今、どこにいるの?」


いつも通りの声に安心しながら聞く。
拓海くんは少し間を空けた後、『由香』って落ち着いた声で名前を呼んだ。

聞きなれているハズの声が、なんだか初めて聞く声みたいに感じて、瞬間的に言葉が出なくなった。
けど、もう一度呼ばれて、ハっとして答える。


「なに?」
『幸せになれよ』
「……え?」


< 212 / 285 >

この作品をシェア

pagetop