蜜色チェーン―キミと一緒に―


「木曜日……拓海くんは、なんて言いにきたんでしょうか?」


私の向かいに座った社長に、思い切って聞く。

私なんかに家庭内の話をしてくれるかは分からない。
けど、ここまで入り込んでおいて聞かないでいるなんて、できなかった。


「千明と彼女を脅してるって。
早く自分を切り捨てないと、大事な跡取りをなくす事になるって、そんなような話だった。
ああ、千明っていうのは、野原さんがさっきコンビニで会った、私の次男の事だ」


そうか……。
拓海くんは、社長がなかなか行動に出ないから自らそんな話をしにきたんだ。
拓海くんは本当に会社を辞めるつもりなんだ……。

全部を、諦めるために。

“ゲームオーバー”
拓海くんが言っていた言葉が脳裏に浮かんで、喉の奥が苦しくなる。

たったひとりで、そうなるつもりなの……?



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