蜜色チェーン―キミと一緒に―


「本当の自分か……。
野原さんには、拓海がどんな男に見える?」
「私は……あんなに優しい人を、他に知りません。
繊細で、いつも私を気遣ってくれる、とても優しい人です。
だからこそ、お母さんの一件で深く傷ついたままなんです……」
「……そうか」


そう呟いた後、社長はしばらく黙っていた。
それから顔を上げて、「ありがとう」と微笑む。


「親として、拓海には何もしてやれなかった。
それを悔いて、私の会社に入社させて距離を縮めていきたかったのに……。
拓海の冷たい態度を信じ込んで、近づくことを怖がっていたんだ。
そうか……。
本当に怖がっていたのは、拓海だったんだな……」


額に手をあてた社長の顔は、なんとか微笑んではいたけれど、苦しそうだった。
伏せている瞳が、わずかに歪む。



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