蜜色チェーン―キミと一緒に―
「本当に、申し訳ない。
野原さんに聞くまで、そんな事思いもしなかった」
「いえ……。あの、ですから、拓海くんが望んでも、会社を辞めさせないで欲しいんです。
ここで逃げたら、拓海くんはずっとひとりぼっちになっちゃうから……」
それを聞いた社長が、にこって微笑む。
その顔からは、さっきまでのツラさは消えていた。
「反抗期の息子を見捨てたりしないよ。
この年になってやりあえるなんて、心から幸せに思う。
精一杯向き合いたい」
「じゃあ……っ」
「手離したりしないよ。
一生かけて、拓海に父親として認めてもらえるように努めるつもりだ。
どんなに嫌がられても」
「あ……ありがとうございます!」
社長の言葉に、安堵から涙がこみ上げてきたけれど、それをぐっと堪えて、お礼と一緒に頭を下げる。
「それは、私のセリフだ。
拓海のために必死になってくれてありがとう。
野原さんにそこまで想ってもらえる拓海を、誇りに思うよ」