蜜色チェーン―キミと一緒に―
切り終えたにんじんをまな板の端に寄せながら、笑顔で言ったけど……、誤魔化せなかった。
自分の過去に敏感な拓海くんは、私が拓海くんの事を考えてるとすぐに気づく。
それは、私が真剣な顔をしてるせいなのかもしれないけど……。
自分の過去の匂いを、ちょっと異常なくらい過敏に感じ取る。
「いいよ、夕飯は後で」
後ろから私のお腹に両手を回した拓海くんが、耳にキスをしながら言う。
低すぎない艶のある声が直接注ぎ込まれると、ぞくぞくとした感覚が背中を走り抜けた。
「でも」
「先に由香にする。ダメ?」
私の顎を掴みながら、覗き込んで聞く拓海くん。
その瞳は寂しそうで、まるでじゃれつく子猫みたいだった。
「……ううん」
微笑んで、すぐ近くにある拓海くんの唇にキスをした。
触れるだけのキスを、私の中に入り込んできた拓海くんの舌が濃厚なモノに変えていく。