蜜色チェーン―キミと一緒に―
『別に、母親のために再婚を受け入れてやったのにとか、そんな押しつけがましい事思ってるわけじゃないけど。
母親が俺を見もしないであいつの味方だけをした時、裏切られた気分だった』
『まぁ、俺がまだ10歳の時とかだし、ショックはかなりでかかったけど。
悲愴感……って言ってもまだ由香には分からないか。
ショックで打ちひしがれる感じ』
『母親は再婚前までは俺の事も考えてくれてたし、だからこそ、母親には幸せになって欲しいと思ってたから、再婚の話をされた時は俺も嬉しかった。
けど……母親の作りたい幸せの中には、俺はいなかったんだ。
母親にとって自分が不要な存在になったんだって受け入れるには時間がかかったけど』
『俺の居場所は……9年前のあの日になくなったんだ』
『由香には難しいかもな。
“お母さん”を誰かに取られちゃって拗ねてるガキだって思っててくれればいいよ』
そんな風に笑った拓海くんは、黙って聞いていた私の頭をポンポンって撫でる。
それから、微笑んで『聞いてくれてありがとな』って言った。