蜜色チェーン―キミと一緒に―
聞いていたんじゃない。
ただ、何も言えなかったんだ。
13歳の私よりも小さかった拓海くんが経験した事が、ショックすぎて……、何も言葉が出てこなかった。
もともと、励ましてあげたいとか、そんな事は思ってなかった。
拓海くんは6歳も年上だし、私に励ませる事なんかないって分かってたから。
分かってたけど……、あまりに衝撃的すぎて、途中聞いているのさえツラくなった。
でも、お母さんを誰かに取られちゃって拗ねてるだけなんて、そんな簡単な話じゃない事だけは分かった。
家に居場所がないなんて。お母さんが自分を見てくれないなんて。
お母さんの描く幸せに、自分がいないなんて……、不要だなんて。
普通の家庭で育ってきた私には到底分からない事だけど、想像するだけでツラくて悲しくて押し潰されそうだった。
それを笑って話す拓海くんが痛々しくて……助けたかった。
『私は……絶対に拓海くんの味方だから』
13歳の冬。
抱いていた淡い初恋は、色を強めてしっかりとした形になっていった。