蜜色チェーン―キミと一緒に―


呆れて笑った拓海くんに、石坂さんが続ける。


「ところで沖田さんって、お父さんの事なんて呼んでますか?
俺、ずっと“お父さん”って普通に呼んでたんですけど、この間友達に笑われちゃって。
なんか、“父さん”か“親父”がメジャーらしいっすよ」
「へー」
「沖田さんは?」
「さぁ。あまり呼んだ事ないから」


ドキっとするような会話だった。
拓海くんが傷つくんじゃないかって、不安になる。

けど、そんな私の心配なんかよそに、拓海くんは普通に会話を続けていた。


「ああ、確かに。
一緒の部屋とかにいれば、誰に話しかけてるかぐらい、呼ばなくても分かりますもんね」
「でも、別になんて呼んでたって構わないだろ。
“お父さん”でも“親父”でも、その家の雰囲気があるだろうし」
「そうっすよねー。いや、なんか、友達に指摘されたら恥ずかしいのかなって思っちゃって。
まぁ、なんて呼んでも関係ないっすね」
「なら、最初から聞くなよ」


呆れたみたいに笑う声が聞こえてきて、胸が痛くなった。


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