蜜色チェーン―キミと一緒に―
「由香? 気持ち悪くなっちゃった?」
「あ、ううん。大丈夫。ちょっとお手洗い行ってくるね」
愛美にそう言ってから、鞄を持って部屋を出る。
タバコ臭かった部屋の障子を閉めてから、ほっと息を吐き出した。
ああいう風に拓海くんが言い寄られているところを見るのは、初めてじゃない。
けど、見かけるたびに、最後まで聞いていられなくなっていつもこうして逃げ出してる。
拓海くんがなんて答えるのかを、聞きたくなくて。
拓海くんは、私をそういう風には好きじゃない。
何度そう言い聞かせても、拓海くんの優しさを感じるたびに、バカな私はいつも少し期待してるみたいで。
他の女の子と一緒にいるのを見かけるだけで、いつも傷ついてる自分がいる。
こんなの、勝手だって分かってるのに……。
わがままだって、分かってるのに。
トイレの鏡に映る自分の顔を見つめて、両頬をペシぺシ叩く。