蜜色チェーン―キミと一緒に―


「ちょっとこっち」
「え……っ」


肩を軽く押されて数歩歩かされる。

田中係長が私を押し込むみたいにして止まった場所は、電話スペース。

くぼんでるスペースに公衆電話がひとつ置いてあって、壁が目隠しになってるから、廊下からは覗き込まないと見えないような場所だった。
トイレまできた人なら分かると思うけど。

なんでこんな場所に?って少し不安になって見上げると、また笑顔を向けられる。


「田中係長、電話ですか?」
「ううん~。野原さんとふたりで話してみたくて」
「……私とですか?」
「そう。ほら、飲み会の時とかもいつも斉木さんと一緒にいるから。
なかなかふたりっきりってなかったし」
「そうですか……。あの、でも……」
「いいからいいから」



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