蜜色チェーン―キミと一緒に―


「え、そんなに帰ってなかったっけ」
『帰ってきてないから、俺が毎日愚痴られてんだろ』


一歳下の勇樹は、今大学二年生。
片道40分くらいかけて、実家から大学に通っている。

昔から、ツンツンした態度ばかりとるけど、本当は優しくて心配性。
私が就職を期に一人暮らしを始めるって言った時も、お父さんよりも反対してきたくらいだった。

女の一人暮らしなんか危ないとか、特に私みたいにガキくさいのは変質者に狙われやすいだとか。

勇樹があまりに反対するから、最初こそ眉をしかめていたお父さんも、いつの間にか勇樹の説得に回ってくれていたほど。

ふくれっ面の勇樹と、それを気にしながらも「ちゃんと元気にやるのよ」って笑顔で送り出してくれた両親。

三ヶ月前の光景が頭の中に蘇ってきて、懐かしい気分になる。


そういえば、最後に帰ったのは三月末だったっけ。
もうすぐ一ヶ月経つのか。
そろそろ顔出さないと心配するかも。



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