蜜色チェーン―キミと一緒に―


『終わったら言って。俺がまた買ってくるから』って。

ただの優しさなのかもしれないけど……、別の意味に聞こえて寂しくなったのを覚えてる。

『……分かった。
毎日ずっと飲むから、終わるたびに拓海くんが買ってきてね』

必要とされたいって言ってるように聞こえたから、そう答えた。
私はずっと拓海くんが必要だからって、届くように。

伝わったかどうかは分からなかったけど、拓海くんは少しだけ微笑んで私を見ていた。


私たちは、そんな、意味のあるかどうか分からない約束をたくさん交わした。

紅茶だって、ネットで探せばすぐに見つかる。
けど、私は一度も検索した事はない。

そんな些細な約束が、拓海くんにとってどれだけ大切かを知っているから。

口先だけでも、ほんの一時でも。
拓海くんが安心できるなら、私は何度でも小さな約束を繰り返す。



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