蜜色チェーン―キミと一緒に―
『……ごめんな、巻き込んで』
私を抱き締めながら、拓海くんが言う。
温かい胸におでこをくっつけながら、何度も首を振った。
それから、高校に入ると同時にケータイを買ってもらった私は、すぐに拓海くんに連絡をとって。
一人暮らしを始めた拓海くんの部屋に、週に一度会いに行く生活を五年間続けた。
そして就職して、今に至る。
拓海くんは……、なんであの時私を切り捨てなかったんだろう。
私が無理言って家庭教師を四年間も続けてもらった間に、情が移ったから?
それとも、ただの気まぐれなの?
誰にも渡さない部屋の鍵をくれたり、優しくしてくれたり。
少しは特別に想ってくれているのは知ってる。
もしかしたら。
長すぎる私との関係に困っているのかもしれない。
一緒にいた時間が長すぎたから、今更突き放す事もできなくて。
そんな風に思って切なくなりながら、メール画面が開いたままのケータイを閉じた。