蜜色チェーン―キミと一緒に―
「中学の頃までは泣き虫だったんだけどね。
なんか少し図太くなったみたいで。ショック受けても、簡単には泣かなくなったんだ」
「中学の頃まで? って事は、猫と仲良くなったのがきっかけ……」
愛美がそこまで言いかけた時。
ガチャってドアの開く音がした。
会話は小声でしていたから、部屋の外まで聞こえたなんて事はない。
愛美がつけてくれた変なあだ名のおかげで、拓海くんの名前も出してないし、もし聞かれていたとしても問題ない。
それでも、話が話だっただけに、びくっと身体がすくんだ。
「でさー、その相手ってどうやら第一営業部の井上のぞみらしいんだよねー」
入ってきた女子社員が、各々ロッカーを開ける。
音からすると、ちょうど、私たちのいるロッカーを挟んで正面あたりみたいだった。