月とバイオリン
「大丈夫?! メアリーアン。た、倒れちゃう?」


 血の気が引き顔色が変わったのは、本人にも見ている側にもわかりやすいほどだった。

ソファの背の木枠を握り、体を支える。こんな目に合わされたことなどない。

「倒れそうだけど、止まっているわ。心配ないって……、言ったって」

「窓が弱っていたみたいなのね。粉々だもの。リースがバランスを崩して、それが原因だとは思うけど」

「バランスを崩し?」


 すると、屋内に落ち込むのではなく、外へと落下していた可能性もある、ということだ。

片側は石の敷かれた街路、片側が伸びきったブナの木立である外にと。

中庭に落ちていたなら、助かるということもあるかもしれない。

大木が受け止めてくれるということも。


ブナの緑は、美少女が好きかも。


なにを考えているのか、自分は。

そうではなくそうではなく……、三階から落ちると言うことは……。
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