月とバイオリン
 醒めきっていない目を、ウィリアムはテーブルの上のヴァイオリンに向けた。

醒める――何からなのか、夢なのか。

それをその場に置いたのは、シェリーという名の娘だった。

突如現れ騒ぎ立てたその娘は、クリアな高い、音のような声を持つ。

「結果が良ければすべて良し、よ。メアリーアン、ウィリアムと私は友達になったの。お友達の所に遊びに来るのは、普通のことでしょ?」

「前後が混乱してる、騙されないわよ。まずはあなたが黙って抜け出したことから始めさせていただきます。だけどそれよりも、リースが先ね。メレディスを呼んで来るわ」

「下で待っているの?」

「えぇ、馬車で。これ以上、何もしないでいてね。すぐに一緒に戻るから」

「大丈夫よ、メアリーアン」
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